●「百人一首」トレイル
先週帰京の後日談。吾が地元「嵯峨.嵐山」のことです。
去る十月、京商創立120周年記念事業「小倉百人一首プロジェクト」の一環として、百人一首の歌碑が建立されました。
歌碑の設置は五ヶ所に分立、しかも結構広域に渡り配されてされていますが、家の近所にて概ね場所の見当は附きます。
と云う訳で、殊眷の歌碑「十首+一首」を巡ってみる事に。
シカシ紅葉行楽雑踏の中、百の歌碑より十一首探し出すのも大変ですた…。
関連過去ログはコチラ。↓
http://bamboo-bar.air-nifty.com/blog/2007/08/post_8121.html
http://bamboo-bar.air-nifty.com/blog/2007/08/post_bab1.html
http://bamboo-bar.air-nifty.com/blog/2007/10/post_4a26.html
歌碑設置場所の参考サイトはコチラ。↓
http://www.ogura100nin1shu.jp/m/?pid=1&lang=ja
【 中納言家持 】 新古今集.巻六.冬
冬夜の寒々とした空気が凍み入る様な一首。
冬の歌に夏の季詞「七夕.天の川」を折り込んだ意匠も然ることながら、表出される情景が清美にて幻想的。繊細幽玄な世界観は家持の真骨頂にて。
辛口で有名な「松山の人」も珍しく褒めてます。
【 喜撰法師 】 古今集.巻十八.雑
世俗の嘲弄を逆に揶揄った遁世者の歌。
洒脱にてイヤミ加減も程良い塩梅、隠者文芸の嚆矢とも云えるものでしょうか。
尤も少し計り、愁嘆や羨嫉の念も入っているかもしれません。
「孤高を持す」のも難しいものですから。
【 蝉丸 】 後撰集.巻十五.雑
調子良く繰り返される反語が弾む様に楽しく響く音象詩。音韻の秀逸さは盲人の作故か。
尤も肝は詠嘆の第一句。覊旅を題材に逢別の儚さを感慨深く表現、三十一文字の「嗚呼無常」。
色恋に走らない「逢坂」の歌も亦珍しく。
【 文屋朝康 】 後撰集.巻六.秋
「白露」「玉」と云った清美な言詞を修辞巧みに掛け合わせ、情緒溢れる風景を読み込んだ歌。
秋のもの寂しさに、清楚さや高雅さも感じさせる一首、颯々とした広野が目に浮かぶようです。
是亦ウツクシイ情景歌。
【 中納言敦忠 】 拾遺集.巻十二.恋
後朝の歌として捉えるか、恋慕の歌として捉えるか。
後者としてみた方が、恋歌として初々しく切ない感じがして好きなのですが…。
尤も時代背景からすると前者なのでしょうが、敢えて違訳してみたくもなるのです。
【 大納言公任 】 拾遺集.巻八.雑
まぁ、特に秀歌と云う訳では無いのですが…。
家の近所が題材てな誼もあり、心証に残っています。
今となっては嵯峨仙洞の面影はカケラ程しか残っていませんが、跡形も無くなった河原院に比べればまだ幸せな方かも知れません。
【小式部内侍 】 金葉集.巻九.雑
縁語技巧を駆使し才知に富んだ一首、母様恋しの心情も可憐でいじらしくあり。
しかも当意即妙の作にて、とても中学生の女の子が歌ったとものは思えません。
されど彼女、この十年後に早逝してしまいます。
薄倖は天才+美少女の宿命故か。
【 周防内侍 】 千載集.巻十六.雑
「詞書.本歌.返歌」と結び付き、宛ら一つの物語として成立しています。
「春」「夢」「手枕」と美しい言詞を用いつつ、結構艶めかしくある内容を気品良く纏めています。
因みに忠家のかへしは「契りありて 春の夜ふかき手枕を いかがかひなき夢になすべき」
【 待賢門院堀河 】 千載集.巻十三.恋
煩瑣する胸中と共に閨に寝乱れる長い黒髪…描写のイヤラシサが特に白眉な後朝の歌。
想像力を蜂起させる官能的妖艶美を醸し出しています。
ベタと云えばベタなのですが、一般的なオトコは好きですよ。こういう歌。
【 後徳大寺左大臣 】 千載集.巻三.夏
♪なんにも無いなんにも無い全くなんにも無い。
(ムッシュかまやつ)
振り返れば有明の月以外、「何も無い」情景。
「無」の空虚感を生み出せるのも亦三十一文字。
郭公も声のみにて姿無き事、云う迄も無し。
【 貞信公 】 拾遺集.巻十七.雑秋
「百人一首」十選+一首。
御土地柄御縁柄の誼で揚げておきます。
従駕の歌としてはキレイに纏まっていますが、まぁ何てこと無い歌。
因みに「おぐらやま」と「あらしやま」、この時代は混同されてごっちゃごちゃです。
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