●嵯峨野「観月名所図会」
今回帰京の後日談リポート。
「中秋観月記」、地元篇です。
行きつけにて早目の夕餉を済まし、観月行脚へ出掛ける事に致しました。
先ず目指すは旧嵯峨御所門跡「大覚寺」。
嵯峨院に始まり亀山、後嵯峨、後宇多、後水尾院…。
風流好みの歴代帝も愛された「庭湖」の名月です。
【写真左】竜頭鷁首船着場辺りより。
未だ「月の低い頃」も幸いして、池面には月姿が倒影しています。
【写真右】勅使門を近景に一写。
普段は寝殿より望むだけの白砂南庭も、この日は立ち入り自由。
菊の御紋に五筋塀は「門跡」ならでは。寺格の貴さが窺い知れます。
もう少し「ゆるり」としたかったのですが、此方では恒例「観月の夕べ」にて結構な人出、早々と退散する事と致しました。
と云う訳で人混みを避け一条通りを東進、一路広沢池へ。
児社周辺は其也に込み合っていましたが、殆どが地元の方々。
大沢池に比べれば静かなものです。
【写真左右とも】広沢池西岸、出島下辺りより。
枝間の影に漏れる「澹月」は宛ら影絵の様でして。
此処も古からの観月所処。その清景は数多の大宮人に愛されてきました。
田圃の畔石に腰掛け、紫煙と珈琲で暫し一服。
松虫、鈴虫、蟋蟀…。背景に流れる秋のBGMも雛風情に心地良く。
広沢池岸東南詰へ移動。
遍照寺山に正対する「日頃愛顧」のビューポイントです。
方角的に正面に月姿は見られませんが、振り返ると樹々の間より木漏れる月明り。
「見返り月」も亦風情宜し、と云った感じです。
広沢の池に宿れる月影や
昔をてらす鏡なるらん
後鳥羽院
続いて嵯峨野から大堰川へ移動する事に。
日中は行楽客で「キモチ悪い」嵐山も、九時を回ると静かなもの。
「中秋観月所処」としては意外な穴場なのです。
【写真左】渡月橋北西詰より望む「月の渡る橋」。
正しく「くまなき月の渡るに似たり」の名にしおう情景です。
人も車も見えない渡月橋、と云うのも稀有なものにて紫煙一服。
おおゐ川 橋を渡りて見る月は 幾秋かけて忘れざるらん 吉祐
【写真右】亀山公園入口にて望む「月は朧に嵐山~♪」。
川面には鵜飼漁の平舟。篝火が舳先で揺らめく様も、いと「つき」づきし。
そう云えば「嵐山鵜飼い」も翌日が最終日、なんて考えると一寸「儚げ」に思えたりもするのです。
以上、こんな所処でした。