●「アール・デコの館」後記(其の参)
先日伺った東京都庭園美術館「アール・デコの館」展覧会のリポート続篇。
今回は「三部作.其の参」、庭園篇に成増。
何時もは戸を閉ざしている茶室「光華」も今展覧会中は一般公開されていました。
茶室外観。
構造/木造平屋建.屋根/入母屋造.瓦葺(下屋.杮板葺).塗壁/真壁.聚楽塗(京壁)
切妻破風には「光華」の扁額が掲げられています。
広間(書院)点前座より庭を望む。
云う迄も無く、庭園観賞は玉座ないしは貴賓席からの眺望が最も良いもの。
従って少し「引き気味」の位置が宜く。
因みに庭園形式は「池泉回遊式」となっていますが、点前座からの眺めは「池泉観賞式」と云っても差し支えないものです。
飛石組二景。
【写真左】南面の踏石と千鳥石打ち。
丸みを帯びた大振りの自然石打ちは利休好み。
【写真左】西面の延段と踏み石打ち。
小振りで簡素ながら意匠の凝った短冊寄敷、左の切株石も効いています。
尤も両者共、観賞本位の飛石にて「渡り二分景気八分」と云った所処でしょうか。
【写真左】水屋廻り。
動線上、広間と小間の間に位置し、比較的広めに配されています。
【写真左】自然木による長押は数奇屋的な趣向。
鴨居との隙間からは広間の網代天井を覗く事が出来ます。
小間(草庵)の炉廻り。
炉切は逆勝手、中柱.仕切り袖壁有り。置き合わせは千家流にて。
利休以降、時代を追うに従い茶室の設えも装飾過多になっていくものですが、この「光華」は煌びやかな金飾も無ければ豪華な飾り棚も有りません。
至って簡素な美しさを保っています。
矢張り宮家と施工者の見識に由るものでしょうか。
と云う訳で、庭園美術館「アール・デコの館」展覧会リポートは是にて完了。
一部の例外は有るにせよ、矢張り良質の文化と云うものは「お武家さん」からでは無く「お公家さん」から生まれるものだな、と再確した事を付記してお終いにしておきます。