●「本屋の無い風景」.改
例に由って「長~い」枕書に成増が…。
私め、幼少の頃からお気に入りの遊び場の一つに「本屋さん」がありました。
週末には馴染みの書店を徘徊、一日中書架の前にいることも度々だったものです。
とは云っても小学生の行動範囲など知れたもの。
当時は洛中の大型書店の存在など露も知りませんでしたので、家の近所にある「町の本屋さん」がその対象でした。
でも其れは其也に、目的別に本屋を使い分けたりして愉楽の時間を過ごしたものです。
やがて中.高校生にもなると「近所の本屋」の品揃えには不満を抱き始め、そうした同類項の友人達と共に選択肢は「京都書院」「丸善」「駸々堂」を擁する河原町界隈へと移っていきます。
これら三書店を徘徊しているうち、必然的に周辺の専門書店.古書店にも触手は伸びていきました。
嵯峨から片道40分(チャリンコ使用)は一苦労でしたが、書店巡礼の魅力は断ち切り難く、足繁く通ったものです。
流石に大学生になると「買い物」「映画」「夜遊び」「バイト場」等々、河原町に対する役割比重は変わっていきますが、町歩きの楽しみの一つとして「本屋逍遥」は欠かすことの出来ないものでした。
そんな訳で河原町界隈は「書店街」としての思い出が強かったりするのです。
しかし、そんな懐旧の談も今となっては文字通り「昔話」になってしまいました。
近年における河原町の急激な変貌(=下流化)により、この界隈から新刊書店がすっかり姿を消してしまったからです。
今や「古参」の新刊書店と云えば、寺町二条の「三月書房」さんと御池下ルの「ふたば書房」さん位。
此処十数年の閉店ラッシュは本(屋)好きにとって「受難」としか云い様がありません…。
紀伊国屋(京都松竹座)、ジュンク堂(BAL)、ブックファースト(コトクロス)…。
大型書店の新規参入が「あるにはある」のですが、余りに書店街としての凋落が激しく何とも寂しい気持ちでいっぱいです。
「平安堂」「京阪書房」「キクオ書店」等々、古書店が健在なのは救いですが目当て無く新刊書店をぶらつきたい気分の時もあるのです。
(此等京都の書店変遷は三月書房さんのブログ「三月記(仮)」に記されています。80年代から90年代に京都で学生生活を過ごされた方は必見。)
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扨、と云う訳にて「やっとの事」本題です。
先日帰京の折、そんな昔のノルスタヂィなぞに浸りつつ「失われた本屋の欠片」を探訪して見る事と致しました。
【旧駸々堂跡地.三態】2000年1月に駸々堂グループ倒産。
(写真左)05年9月で閉店したパパラギ書店さん。
駸々堂倒産後、旧三条店跡地で営業されていたドメスティック書店。
所謂普通の「町の本屋さん」にて書籍構成にさほど特色は有りませんでしたが、気軽に立ち寄れる立地の利便性から雑誌.文庫本などをよく購入したものです。
現在は仏壇屋さん。
(写真中)06年1月ブックファースト京宝店閉店。
駸々堂倒産後、旧京宝店跡地で営業されていたチェーン店。
私が京都を離れてからのお店なので正直それ程の思い入れはありませんでしたが、立地の良いワンフロアの路面店の事もあり、帰京の折にちょくちょく立ち寄っていました。
これで駸々堂の残香を感じられる本屋が本当に無くなってしまったのが残念です。
現在は複合商業施設「ミーナ京都」。
(写真中)93年7月で閉店した駸々堂河原町店。
私が京都を離れる半年程前に閉店されたと覚えています。
取敢えず売場の奥半分を占めていた漫画コーナーの印象が強烈でした。
そう云えば大学受験の際、赤本を買い揃えたのが此方でした。
現在はボーリング屋兼遊技場「ラウンドワン」。
【丸善京都店跡地(05年10月10日閉店)】
「駸々堂」「京都書院」と共に、学生時代には最もお世話になった新刊書店。両書店亡き後、学生時代のノルスタジィに浸れる最後の所処だったのですが…。
文具やネクタイ特売のアルバイトをしたことも懐かしい思い出で、その為か未だ93年に改装する前の「オンボロ五階建て」のイメージが強かったり致します。
最終日には「檸檬」持参で東京から駆け付けました。
現在はカラオケビル「ジャンガラ」と化しております。
【河原書房さん跡地(05年12月末閉店)】
突然の閉店を知ったのは年明けに伺った際でした。
ただ呆然、事態が呑み込めず暫く店跡に佇んでしまったのを覚えています。
専門書(茶道.華道.古典芸能.美術書)に特化した品揃えは、とても新刊書店のそれとは思えぬ程。其故か何となく古書店の気配が漂う店内が好きでした。
建築.庭園.京都史料関連の良書も充実、探書の必要がなく何時も重宝させて頂きました。
現在は小型ビルが建てられ、AUが入居しています。
【祇園書房さん跡地(06年10月14日閉店)】
正に「花街の本屋さん」と云った風情が大好きでした。
御土地柄、料理本や花街関連の書籍が充実しており、三時頃には中休みの若い料理人さんや結上げ前の舞妓さんの姿もよく見かけたものです。
祇園界隈で夕餉の際、時間調整なんぞにも使わせて頂きました。
余談ですが、先日祇園町の舞妓さんと「祇園書房が如何に素晴らしい本屋で、且つ閉店が何れ程悲しい出来事であったか」熱く談じたのを思い出します。
現在は御覧の通り、アナタとコンビニ「ファミリーマート」となってしまいました。
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因みに私の実家近所(嵯峨中学学区)の本屋も減少の一途を辿っています。
健在なのは「天龍堂」「車折書店」くらい。
「かとり書店」「鹿王院駅横にあった貸本屋」「有栖川書店」…、後は皆無くなってしまいました。
(序でに学習塾の近所だった堀川丸太町の星野書店と烏丸のアオキ書店。)
まぁ御時世を考えれば止むを得ないのでしょうが、何にせよ馴染みの店が無くなるのは寂しい限りです。
なぞと綴ってる間に、亦「訃報」が届かない事を祈るのみにて…。