●正福寺にて
えー先週は金曜日、炎天下の昼最中の琴。
部屋にて「日本の美術 No.126」を読んでいると不図したキマグレン、無性に唐様の建造物が見たくなりました。
果たして思い立ったら即実行に移せるのが「無職の良い所処」、そんな訳で武蔵野の地迄足を運ぶ事と致しました。
目指すは東村山、正福寺地蔵堂にて。
【写真上】地蔵堂.近景二写。
1407年(応永14)建立、方三間.一重裳腰付.入母屋造杮葺.裳階部銅板葺。
この地蔵堂、所謂禅寺堂宇の「仏殿」に当たります。
現存する禅刹仏殿は大体が江戸期以降の再建、建築様式も折衷様殆ど。
その中で古式に忠実に作られている「純禅様」建造物として貴重な遺構です。
尚、鎌倉~室町期建立の「方三間.裳階付仏殿」で極めて酷似するものとしては円覚寺舎利殿(1393-1466年頃)、ほぼ同様式のものとしては永保寺観音堂(1314年).功山寺仏殿(1320年).清白寺仏殿(1415年)が現存しており、何れも国宝となっています。
因みにこの地蔵堂、「旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)」が2009年に国宝指定を受ける迄は都内唯一の国宝建造物でした。
【写真左】山門脇より眺む地蔵堂。
この辺りからの構図が、最も見栄えが致します。
こうして見ると五山クラスの大禅刹仏殿に較べ、物柔らかに見えるもの。
規模の大小もあるでしょうが、矢張り杮葺の屋根は本瓦葺に較べ丸みを感じます。
【写真上】地蔵堂.左右側面より。
「桟唐戸」「弓欄間」「肩の張った花頭窓.花頭口」「竪板壁」「母屋の三手先組」「軒反りの強さ」等々、禅宗様の典型が細部に迄見てとれます。
但し屋根を茅葺から杮葺きに葺き替えた昭和8~9年の改修工事の際、屋根の反り具合には手が加えられています。
以前は若干の「起り」があり反りの柔らかかった屋根を、より禅宗様らしい反りの強いものにされました。
【写真上】おまけ.その一、地蔵堂西側の墓地より境外を眺む。
寺領周辺は四囲全て住宅地。
嘗て「嵯峨野の竹林」と並び謳われた「武蔵野の雑木」の面影は残っていませんが、高層建造物の無い分、武蔵「野」の空は広く感じるのでして。
【写真左】おまけ.その二。
正福寺に並列して鎮座する八坂神社。
同寺が久米川の八坂神社別当を兼ねていた事もあり、鎮守神として勧請された仮宮でしょうか。
もうすぐ祇園祭なので、その縁もあり一枚撮って参りました。