●甲州路巡礼「清白寺」
えー、先日の後日談。
木曜日は甲州路にて「古建築巡り」。
塩山駅からチャリンコを漕ぎ出でて、最初に向かった先は三ヶ所の臨済禅刹。
そんな訳での五寺巡礼その一、「清白寺」篇になります。
【写真上】総門。
享保16年(1731年)建立、四脚門.切妻造、桟瓦葺。
親柱が棟木迄伸び、控柱は円柱形と云った一般的な禅宗様の四脚門。
構造は可也簡略化されている。
【写真上】仏殿。(国宝)
応永22年(1415)建立、桁行三間.梁間三間、一重裳階付.入母屋造、檜皮葺。
総門から鐘楼門(兼三門)を経た延長線上に建在。
小型禅宗仏殿建築の代表的遺構、その規模は「万福寺.地蔵堂」に近似するが、より一回り小振りである。
他、純禅様の代表的な方三間仏殿には「円覚寺」「万福寺」「功山寺」、基本形の構造略化したものとして「永保寺.観音堂」「洞春寺.観音堂」等があるが、中世の遺例は十指に足らぬ貴重なものである。
【写真上】同.近景。
竪板張りで花頭窓を施した柱間、正面中央の桟唐戸には菱格子花狭間、頭貫と内法貫間には弓連子欄間の意匠。
一見しただけで禅宗様特有の装飾が見られる。
屋根部輪廓も禅刹仏殿独特のそれであるが、上層の軒反りは比較的控え目。
【写真上】同.側面より。
組物手法も禅宗様であるが主屋組物は出組詰組(裳階は出三斗)とし、可也の簡略化が見られる。
垂木は裳階部に平行垂木.上屋は扇垂木を、何れも疎垂木を配す。
従い禅宗建造物特有の幾何学的とも云える、繁垂木.組物群軒廻りは見られない。
尚、同時代(室町期)の地方禅寺建造物遺構は、前述した「永保寺」「洞春寺」の他にも組物の略化したものが多く見られ、禅宗建築が国内全般にで馴染んできた事を示すものであろう。
【写真上】庫裏。(重文)
元禄2~6年(1689~1693)建立、桁行9間半.梁間6間半、一重.切妻造.妻入、茅葺、(北面庇付.鉄板葺)。
堂宇中心線上の東側に逸れて建つ。
南側正面を見せる切妻は禅刹庫裏の典型的意匠。
妻飾は蟇股三重虹梁を大瓶束が支える。
【写真上】同.側面より。
堂宇上の役割にも因由するが、禅刹伽藍と云うより農村地主旧家の佇まい。
茅葺屋根も葺材入手の容易さから必然なのであろうが、矢張り地方に於ける禅刹庫裏ならではの特色、出来れば内部公開を求めたい所処である。
尚、禅宗寺院の庫裏は遺例が少ない上に最古のものでも瑞厳寺.妙心寺からとなり近世以降に属する。
加えて地方的特色が顕著な点に於いても貴重な遺構である。
【写真上】本堂。(市指定)
元禄6年~正徳3年(1693~1713)建立、
桁行10間.梁間6間半、入母屋造.軒唐破風付、桟瓦葺。
前後各3室.6室構成の一般的な方丈型本堂、嘗ては法堂的役割をしていたと思われるが、現在は書院的要素が強い。
軒唐破風は中門に属し、江戸期元禄様式の彫刻を施している。
庫裏同様、本来茅葺であったが近年桟瓦に葺き替えられた。
【写真上】帰路の折、最後に「見返り仏殿」一写。
この後は「大善寺」へと向かいました。
続く。