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2011.11.04

●円覚寺「宝物風入」

本日は兼ねてからの予定通り、昼前より湘南新宿ラインにて「キャバクラ」へ。
否々、「カマクラ」は円覚寺へ足を運んで参りました。
何故態々この日なのかと申しますと、勿論お目当ては「宝物風入」です。

毎年11月3日前後の三日間は、円覚寺収蔵の文化財「虫干し」の日。
その作業を兼ねて寺宝を展示する催事を「宝物風入」と申します。
尤も私め「古文書」の類には全く興味が無く、参詣の目的は併せて行われる「舎利殿」特別公開」で御座いますが。

003
【写真上】円覚寺.舎利殿。(国宝)
室町初期(15C前半)建立。桁行三間.梁間三間、一重裳階付.入母屋造、杮葺。
組物は裳階部三斗組、身舎部三手先。中備は共に詰組。
軒組は裳階部二軒繁垂木、身舎部二軒扇垂木。
柱間は縦板張、中央桟唐戸、脇間火灯口、庇脇間火灯窓。
頭.内法.地貫を通し、頭貫下には弓欄間を配す。

永禄6年(1563)の罹災で一山焼亡した後、尼五山大平寺から移築したもの。
その為、方三間と小規模であるが、中世純禅様仏殿として貴重な遺構。
尤も移築建造物と云う事もあり、大禅刹の本来あるべき場所(主要堂宇の中心線上)に位置しておらず、寧ろ開山塔頭.正続院の昭堂としての性格の方が色濃い。

類例としては幾つかの建造物があるが、規模に加え年代.地域性からも武蔵野「正福寺.地蔵堂」との類似性が顕著である。

001
【写真上】同.近景。
「軸部」「組物「軒廻り」「柱間装置」等々…。
細部に至る迄、典型的な純禅様で造営されている事は改めて述べる迄も無い。

以下一応念の為。
特別公開中と云えども舎利殿は間近からの撮影は禁止されており、従い上二枚は築地塀外よりの望遠撮影(しかもチョット写真加工)になります。
組物や軒組、屋根勾配や軒反の資料は撮れず終いでした。
尤もこれに就いては建物のの宗教性格上、仕方無いと思います。

然乍らこの舎利殿、前述した様に塔頭.正続院内に位置しており、その為通時は一般には門を閉ざし非公開。
中世純禅様仏殿の文化財(しかも国宝指定)を、年六日(宝物風入期間+年始三が日)しか公開しないと云うのは如何なモノかと…。

005
【写真上】三門。
天明5年(1785)建立、三間一戸.二階二重門、入母屋造.、銅板葺。
組物は下層出組、上層尾垂木入り三手先、、中備は共に詰組。
軒組は上層二軒繁垂木、下層二軒扇垂木。
上層は擬宝珠高欄を配し、柱間中央に棧唐戸、脇間は木瓜型眼像窓。 
禅様本位の建築も、高欄.窓や長押打等に和様との折衷様式が見られる。

山内主要伽藍で唯一残る古建築。
尤も近世末の造営にて、特に観るべき意匠は無い。
特に各階高比の悪さに加え下層を吹放ちとしている事により、建物のボリュームが過度に上層に偏り、歪な感じとなっている。

007【写真左】同.近景。
柱軸部の構成や中備の詰組、上層の二軒扇垂木、下層も吹放ちとは云え頭貫.内法貫越貫らしきものを通す等、禅宗様式が伺える。
但し柱間意匠は可也簡略化、様式の混同がされており、禅宗建造物特有の理知的な美しさは感じられない。

と、こんな所処にて。
折角なので、この後は「鎌倉五山の一」へ向かう事と致しました。
続く。

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