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2015.04.07

●2015/16ニューモデルスキー.インプレ①

えー、毎春恒例、来季の「ニューモデルスキー試乗会」リポート。
インプレッションその①、先ずは「アトミック.前篇」になります

今シーズンの参加試乗会は「3/9.五竜いいもり(アルペン)」「3/14.黒姫(スポーツゼビオ)」「3/21.苗場(JSP)」「4/28.戸隠(タナベスポーツ)」の計4回。
例に由って「小回り~中回り基軸の基礎板」を中心にテストして参りました。

A1
【写真上】3/9(土)、五竜いいもり試乗会の様子(アルペンさん主催)。
尚、試乗者スペックは以下の通りに成増。
  年齢 アラ4.5(おっさん)
 体格 身長172㎝ 体重59kg
 体力 中距離ランナー.中の上 (1万m:37分、ハーフマラソン:82分) 
 技術 SAJ1級 13年前迄は草レースに出没
 嗜好 ショート.ミドルターン>ロングターン、スピード好き
 弱点 軽量。返りの強過ぎる板、重い板には負け気味
 滑走日数 毎季約30〜50日
 現行板 DYNASTAR/SPEED GROOVE DEMO R18(2012/13)

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・ATOMIC/BLUESTER  SL PRO (165cm)

 R/12.0 SC/117.5-65.5-101.5
2015/16ニューモデル.インプレッションの一発目は皆川スペシャル。
叩き台となる開発ベースが異なる上にD2非掲載、ロッカー未使用。
従い「S系/L系」4機種とは明らかに乗り味と難易度が違います。

ブーツ回りを中心とした、重厚なエッジホールド感が出色。
角付け強めで走らせていてもソール全体で雪面を捕えている様な安定感です。
S系より硬めのフレックスでスムーズながらもガチッとしたターンの入り、俊敏さよりしっかり強さを感じさせます。
深いRを描くイメージは稀薄でターン初動で素早く方向付けして落差を取って加速させていく感じ、後半「縦走り感」の伸びはSXの比ではありません。
スキーのたわみを利用してカービングさせるより、フォールラインに走らせつつ競技的な「減速要素の少ないズレ」を使った直線的なコントロールがし易いです。
あと、アトミックとしては「オートマ縛り」が薄めのマニュアルシフト。
総じて殆んど純SL機の感覚、あくまで「整地使用」がメインのスキーです。

この板の注意点ですが、グサ雪下での試乗イメージは全く役に立ちません。
中斜面レベルやコーンスノーのコンディションだと、意外と乗れちゃうんです。
少なくとも扱い易さで云うなら昨季試したXT(FISシティイベント仕様)より楽で、私めも「モサグサ春軟雪」の苗場試乗では然程のシビアさは感じませんでした。
しかし朝冷えでバーンの締まった戸隠(急斜.パックバーン)ではその本性を存分に堪能、「見事に置いてけぼり食らいました」。

高速域では重厚さと切れを伴ったエクスタシーな加速、しかし反面「このままだとヤバい」と一瞬怖さを感じる程。
例えばSX/LXの様に、板が乗り手と一緒に「絶対速度域へついてきてくれる」優しさは無く、ギュンギュン走ってあとは「乗り手が何とかしなさい」てな感じ。
例えば膝が立ってしまった際に踵荷重なぞしようものなら、一瞬で腰から下を「持って行かれて」しまいます。
少し競技を齧っていたテスターでコレですから中級者レベルでは手に負えないSLマシン、正直この板で「基礎滑り的」深回りのショートとか無理ゲーです。
サービスマンの方も曰く、扱い難さは「FIS.SL>SL PRO>D2SL=SX」との事でした。

従い適正技量は「最低でも」要プライズレベル、出来れば競技やってる(た)方。
基本的に重い板(多分3600gオーバー)ですので、一日中アクティヴに乗り回すには結構な体躯.筋力も必要です。
ブーツも可也確りしたトルクが必要、私めの靴(LANGE/110)では拉げてしまい、おハナシにならないレベルでした。

あと、板そのものの評価とは関係無いのですが…。
気になったのがターゲットユーザーがイマイチ明確で無い事。
購入対象者の技量からして万能性を優先するんだったら「SX」チョイスでしょうし、草レーサーでゲレンデユーズでも使いたいのなら難易度下げて「non-FISのSL」、ガチでレースやってる方なら「ヒルシャーモデル」をチョイスされるでしょう。
だったらをコスメを思いっ切り変えるなり、デザインだけでも差別化した方が良かったのではないか、と。

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・ATOMIC/BLUESTER DOUBLEDECK 3.0 SX (165cm)
 R/10-11-12 SC/125.5-69-111(2014/15より変更無し)
今季のアトミック.D2シリーズは細部微調整レベルのマイナーチェンジ、「ランプ角」「ベースエッジ角」の変更と「トーション強化」の三点です。
従ってドラスティックな変化はありません
が、微変更の分だけ少し乗り味が変わってます。

先ず、昨季モデルに較べ「ターン後半.踵荷重からの爆発的な加速感」が薄まった。
否、厳密に云うと「薄まった様に感じる」。
ブーツ踵下からテールに掛けての張り.剛性を生かしてターン後半にギュイギュイ加速していく感じが小均され、サイドカーブ全体を使うイメージになりました。
テクノロジーの微変更としてプレートのドロップ差が小さくなった事に起因するのでしょうか、これはD2機種共通も特にSXで顕著に感じました。
それでも基本的に「センター~テール中心」で走らせる板に変わらず、ガッツリとエッジに乗ってサイドカーブを生かしたターンをすると「ギュイン!!!」。
まぁ「伸びの気持ち良い事」、の一言です。

次にこれは「具体的にココ」と云うより全体的な乗り味なのですが、年を追う毎に「ウェット」と云うか「芳醇」と云うか、まぁ「マイルド」になってきています。
例えるなら赤身の多かったサーロインに、程良く霜降りが入った様な…。
今季で「第三世代・改」となるD2構造が、更に研磨.熟成されていってると云った感。
こうなると来季は「何処」を「如何」乗り易くするのか、興味が湧いて参ります。

今季モデルで感じた事は以上の点。
その他特徴は2013/14モデルに準ずるので、昨年のインプレを加筆修正しときます。
アトを評する際に必ず出てくるキーワード「ソールが張り付く様な安定感」「雪面振動の圧倒的な吸収力」「ターン後半のオートマ感」は健在。
ターン初動はアトの構造的特性でもあるトップのしなやかさを利した、スムーズ且つ行き過ぎないクイックさ。
中後半から抜け出しの走りや足元への戻りも重厚にてマイルド、ターンの切れやスピードに反して板自体の挙動は非常に落ち着いています。
守備範囲もミドル迄なら板の攻撃性を損なう事無く走ってくれ、中低速での操作性が鈍くなる事も無くコントローラルブ、深いターン弧も描ける。
トップモデルにも関わらず乗り手を選ばない(様な)扱い易さ、整地~やや荒れの中斜面では自分が上手くなったと勘違いさせる板です。

あと、今年は例年よりSXを乗り込んだのですが(計4回)、改めて感じた事が一つ。
「矢張り難易度の高い斜面でナンボの板」。
スキーウエイトとスペックに反して速度域不問の操作性を持つSXですが矢張り重厚路線の板、中低速では足元に重石的な重量感を感じます。
反面、高速域になると「軽快」とは行かない迄も「俊敏」さを増し、その重さを感じない程に動かし易くなりました。
オートマチック板特有の「自縄自縛感」も、速度域が上がるに従い薄まってくれます。
要するに最上位機種、ユーザーのハードルはそれなりに高いと云う事。
適正はテククラレベル前後、それと3500g強の板を扱い熟す体格.筋力も必要です。

最後に、これも昨季も述べましたがブーツとの相性が結構大きい板。
スパイン/ボトム剛性が強い靴の方が、滑りの特性を引き出し易いです。
基本的にLX/SX/SL PROはブーツもアトミック(アンダーでトルク120)とのセット販売として考えた方が良いでしょう。

2
・ATOMIC/BLUESTER DOUBLEDECK 3.0 SC (165cm)
 R/10-11-12 SC/125.5-69-111(2014/15より変更無し)

SCに関して、その立ち位置は昨季同様。
特性や滑走フィーリングはSXの項を参照、それを全体的に「薄味」に仕上げた感じ。
メタルが抜かれた事により扱い易いフレックスになった事、及びスキーウェイトが軽くなった事によるメリット/デメリットが同居しています。

SXの持つ性能を随所に残しつつ、スキッドの容易性とスポットのシビアさに遊びがあるのが最大のアドバンテージ。
云わずもがな、コブでの取り回しは圧倒的にSCの方が楽チンです。
プラス「一日中アクティヴに滑る体力」を天秤に掛けた場合、一般上級者(1級レベル)はSCをチョイスした方がメリット分が大きいかと。
デメリットとしては、ターン後半の加速感と重厚な雪地安定感がやや弱まる事。
SX/SCのチョイスに悩んでおられるユーザーは先ずSCを試乗してみて、明らかに物足らない場合にSXをテストされるのが宜しいでしょう。

但し軽快になったとは云え、アト的「オートマ感」は相変わらず。
能動的にスキーを動かしたがるユーザーは、別のブランドをチョイスした方が宜しいと思われます。

以上、こんな所処にて。
ニューモデル試乗インプレ、次回は「アトミック.後篇」になります。

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