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2020.11.04

●2020.グラス新入荷③

えー、本日は「2020年.秋」グラス新入荷シリーズ.その3。
9月後半~10月中は赤坂から武蔵野口に移って初めての「グラス強化月間」。
地元京都のアンティークショップを中心に、幾つかのお店からアンティーク/現行モデル合わせて15客ほど購入して参りました。

と云う訳で、ニューアイテムの幾つかを簡易解説付きで御紹介です。

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【Fritz Heckert】草花文エナメル彩グラス(ドイツ/1910~30年頃)
云わずと知れたボヘミアのエナメラー、フリッツ.ヘッケルト。
蒐集家の中でも特に人気の高い作家ですが、工房立地や時代背景が原因で資料が少ないのが困りモノ。
15年位前に札幌の虎徹さんから資料を頂き、まとめたものを以前upしましたが、今回は改めて加筆補正したものを登載しました↓。
尚、フリッツ.ヘッカート/フリッツ.ヘッカーなんて表記をされる事もあります。

Fritz Heckert/フリッツ.ヘッケルト(1837~1887)
創業は1866年、ドイツ(プロシア)/ポーランド.チェコ(ボヘミア)/オーストリア.ハンガリー(ハプスブルグ王朝)の国境地域、シレジア地方ペータースドルフに工房を構えます。
この地域は13世紀頃から伝統的なヴァルトガラスの生産地域でしたが、時々の勢力によって統治国家が二転三転。
その所為もあり詳しい資料の少ないガラス工房となっています。
創業当時は 17~18世紀の様式を模したオールドジャーマンデザイン(ヴァルトガラスやレーマー杯)を多く制作していました。
1885年にはガラス工房を拡張
その後アーツ&クラフト運動の影響を受けカール.ケッピングやツヴィーゼルと共に保守的なドイツガラス産業界をリードしていきます。


ヘッケルトは1887年に他界しますが、工房は家族に受け継がれ興隆期を迎えます。
1900年代にはマックス.レイド/ルードリッヒ.ジュッタリーン/ウィリー.マイツェンなどのデザイナーを招聘、またアドルフ.スコープらベルリン美術学校の教授陣などが工房と提携/継承したとされています。
アールヌーヴォー期にはカメオガラスに草花文のグラヴィール装飾といったユーゲントシュティール様式を得意とし、フラワーベースなどを多く制作。
1900年のパリ万博で金賞を受賞、
1902年にはトリノでの第1回国際現代装飾美術展で銀賞を受賞するなど高い評価を得ます。

その後1911年に「Fritz Feckert-Petersdorfer Glashütte KG」と社名を変更。
1923年に同じシレジアのJosephinenhutte(ヨゼフィーネンヒュッテ)、ノイマン&スティヴ(Neumann & Staebe)と共同会社となり、1925年には「Josephinenhutte A.G」として吸収合併されます。
アールデコ期に入ってもドイツのガラス業界に影響を与えたとされていますが、現在のアンティーク市場でアールデコ期以降の作品は殆ど見られません。
推測の域ですがその装飾技法からデコ期の工業的.機能的.実用的な1925年様式に迎合出来ず時代な遅れなスタイルとなり、ヨゼフィーネンヒュッテの作品を制作していたと思われます。

1945年までは製造を続けていた事が確認出来ますが、戦後シレジアはドイツからポーランドに移領。
その後工房は閉鎖され
現存はしていません。

このモデルは1925年頃の「ヨゼフィーネンヒュッテA.G」カタログに全く同じものが掲載。
但し同社のテーブルウェアはクリスタル素地にカットを施した様式のものが多く、技巧からしてこのグラスはヘッケルト工房で作られたものと見て間違いありません。
従い制作年代は会社の吸収合併期の前後かと。

あと隣のリキュールグラスは前から持ってるモノ、折角なので記念撮影代わりに撮っときました。

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如何にも「フリッツ.ヘッケルト」と云った感のカラフルなエナメル彩。
ヘッケルトはキプロスデザイン (エジプト/ペルシャ様式)を好んで用い、ゴールドギルドやにエナメル彩の手法を得意としていました。
特に19c後半の作品はエナメルの盛りが半端無く厚く、最早「三次元」の域。
あと草花文はもう少し写実的なものが多かったです。
(何客か使ってましたけど全て割っちゃいました…)
また、当時大流行したジャポニズムの影響を殆ど受けていないと云う点でも珍しい工房です。

このグラスもペルシャ絨毯やステンドガラスを彷彿とさせるアラベスクデザイン。
カッティングの後にエナメル彩とギルトを入れ、何種類もの草花文が多彩/複雑な色調でハンドペイントされています。

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【LOBMEYR】モノグラムエナメル彩(オーストリア/19c後半~20c前半)
シンプルながらも金彩+エナメル彩+ラスター彩のトリプルコンポ。
手の込んだウィールものは価格がぶっ飛んでますが、この辺のロブマイヤーなら手が出せます。

このモデルはハプスブルク帝国末期のテーブルウェアとして作成されたものですが、色々なサイズが存在し年代も絞り難い。
ただヨーゼフ1世の皇妃エリーザベトが晩食会用に用いたグラスセット資料に近似したものがありますので、古くて彼女がホーフブルグに入宮した1860年代から療養でウィーンを離れる1880年代の間。
若しくは時代を下って、それからハプスブルク帝国が崩壊する1918年までの間。
うーむ、年代幅が広過ぎる…。

19世紀のロブマイヤーとしては形状と装飾がシンプル過ぎるので、まぁ20c前半と云った所処でしょうか。

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光の屈折率マジック。
グラス全体にラスター彩(金属の粉末を吹き付けて焼き付ける)が施されており、光の角度や強弱でカリクリスタルの色調が変化。
澄んだ青色を基調に、真珠や玉虫の羽を思わせる神秘的な輝きを醸し出します。

エナメル彩は「a.e.i.o.u.」を簡易化した様な紋章に「A(オーストリアの頭文字でしょうか)」のモノグラム。
繊細なタッチのイニシャルをエナメル彩で厚く盛り上げています。
そー云えばバカラがハプスブルク家に制作したグラスセットにも同様の紋章を施したものがありました(それも大分前に割っちゃいましたけどね…)。

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【LOBMEYR】
Persian/ペルシャ No.1&No.2(オーストリア/現代)

2000年代初頭に販売されていた、ロブマイヤーのエナメル彩タンブラー。
1898年にグスタフ.シュモランツのデザインしたグラスウェアをリプロダクト、ピーター.ラートがデザインしたモデルです。
他に「China」「India」と云ったラインナップ(下図参照)があり、インディオは赤坂時代に使っていました。
http://bamboo-bar.air-nifty.com/blog/2008/08/post_7841.html
しかし悲しいかな破損でサヨウナラ、そんな訳である意味「買戻し」的な購入です。

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カタログより借載。

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エナメル彩が投影する陰絵も美しい。
カラフルで繊細な花のモチーフをエナメル彩で手描き、そして24金のギルド。
ラインナップ名の「ペルシャ」に加え、そこはかとなく東洋的オリエンタリズムの雰囲気も致します。
サイズは小振りなOF、ゴージャスなウイスキーをニートで飲るのに良い鴨。

あと全くの余談ですが、実はコレ「ヤフオク」で購入したもの。
出展者の専門が和骨董でグラスウェアの眼識が無かったらしく『西洋工芸ガラス ハンドペイント 金彩 草花図グラス(グラスの底にサインのようなマークがあります)』とのタイトルで出展されていました。
勿論「ロブマイヤー」の検索では全く引っ掛かりません。
お陰で入札は殆ど無風状態、二客セットを定価の1/4の激安価格で落札出来ました。
でも1.2を手に入れると…、やっぱり3も購入して「コンプリート」したくなりますね。

と、こんな感じの「2020.AUTUMN」グラス新入荷その3。
その4は「ちょっとお馬鹿な」現行品のオールドファッショングラスです。
 

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