「あ、そうだそうだ」その時私は袂の中の柘榴を憶い出した。
果実の色彩をゴチャゴチャに積みあげて、一度この柘榴で試してみたら「そうだ」。
私は手当たり次第に果物を積みあげ、また慌しく潰し、また慌しく築きあげた。
やっとそれはでき上がった。そして軽く跳りあがる心を制しながら、その城壁の頂きに恐る恐る柘榴を据えつけた。そしてそれは上出来だった。
見わたすと、その柘榴の色彩はガチャガチャした色の階調をひっそりと球状の身体の中へ吸収してしまって、カーンと冴えかえっていた。
不意に第二のアイディアが起こった。その奇妙なたくらみはむしろ私をぎょっとさせた。
―それをそのままにしておいて私は、なに喰わぬ顔をして外へ出る。―
変にくすぐったい気持が街の上の私を微笑ませた。
紀伊国屋の棚へ深緋に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの紀伊国屋が青果の棚を中心として大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。私はこの想像を熱心に追求した。
「そうしたらあのお高く偉ぶった紀伊国屋も粉葉みじんだろう」
そして私は高級舶来品の看板が奇体な趣きで街を彩っている表参道を下って行った。

えー、何故か「表参道」に出掛ける事の多い初秋/仲秋の頃。
普段用事の無いオサレな街に、月②~③ペースで足を運んでおりまする。

出向く先は「紀伊国屋」さん、秋のフルーツ「ザクロ」の仕入れです。
11月以降は大手果実店やアメ横などでも取り扱われるザクロ。
しかし9~10月に販売されているお店は、都心だと紀伊国屋さんしかありません。
そんな訳で今日も表参道の「紀伊国屋.青山店」へ出掛けて参りました。

表参道駅から地上に出て、買い物済ませて地下に潜る。
所用時間は僅か5分、殆ど通りすがりレベルの「表参道」滞在でした。
尚冒頭の一文は「檸檬を柘榴」「丸善を紀伊国屋」に置き換えての、梶井基次郎🍋。
何せザクロの英語表記は「手榴弾(grenade)」の語源となる「pomegranate」。
檸檬よりは爆破テロに向いていると思っての戯れでした、とさ。